震災報道に関してある人のツイートが話題になっている。
ポポポポーンの歌をなめてはいけない。常時9/8拍子に加えて「魔法の言葉で」のみ意表を付く8/8拍子とBPMが約2/3に落ちる凶悪ソフランのコンボ。俺がこの曲にジャンルをつけるならプログレッシブポップ。
あまりにヒドイので誤解の無いよう簡単に解説しておく。
「9拍子ってなんじゃい??」
と戸惑う方もいるかもしれないが、「8分のN拍子」というのは複合拍子と言って、
基本的には8分音符3つ分を1拍とする拍子…つまり 9 ÷ 3 = 3拍子なわけ。
そして 8/8拍子と書いているが、これは単なる4拍子。
つまりサビの前につなぎの4拍子が入っているだけで、最初から最後まで3拍子。
どこが「プログレッシブ」なんだかわからない。
ところが、そのわけのわからない説明が素人さんたちには「専門的な評価」に映ってしまったのか、なんと3000件を超えてリツイートされている。なんと恐ろしいことか。
そもそもBPMという言葉がタチが悪い。
拍子で言えば前述のとおりこの曲の拍子は3拍子。
サビの前で「つじつま合わせ」の4拍子が入るが、テンポは変わっていない。
ところが「BPM」が変わっているから「プログレ」だと言う。
これはどういうことか。
BPM というのは
Beats Per Minute
例えば人間の心臓なら1秒間に大体1回、脈を打つから1分間に60回。
これをBPM=60というように速度(テンポ)をあらわすもの。
この曲の場合、9/8拍子(3拍子)なので、1拍の単位は8分音符 3つとなる。
しかし、途中で入る4拍子は「テンポを変えず4拍」なので、1拍の単位は
4分音符1つ(8分音符2つ分)である。
これが
BPMが約2/3に落ちる凶悪ソフラン
の意味するところだろうが、そもそも『拍の単位』が違うのに無理に『8分音符のBPM』で合わせようとするから変な誤解を生じるのだ。
言ってみれば、江戸間と京間という違いがあるのに「こっちは5.5畳でこっちは6畳だ!」と言うようなものである。江戸間だろうが京間だろうが 6畳は 6畳だ。
この曲を「9/8拍子」と言える人だけにどこまでネタなのかわからんけど、こういった半端な知識でわかったようなことを言う「素人騙し」は非常に迷惑だ。
ついでに、「2番からすごい変拍子になってる!」ってツイートしている人もいたが、歌ではなく『伴奏に注意して』聴いてみてほしい。
http://nicovip2ch.blog44.fc2.com/blog-entry-2210.html
どうだろう?ちゃんと3拍子に聴こえただろうか。
ただね、そういう発想は面白いと思う。
意図してか意図せずかはわからないが、2番は歌詞が強拍とズレているため
ちょっと不思議なリズムに聴こえる。
つまりシンコペーションなど
「強拍の位置をずらす」ことによって独特のビート感を生み出すもの
であって、拍子が変わっているように聴こえても、よくよく聴いてみると実は単純な4拍子だったりする。(例えば Metallica の『ORION』)
これこそが「プログレッシブ」であって、「拍感が変わらない」のにプログレッシブもへったくれもない。
そういう意味では、変拍子に聴こえてしまう単純拍子っていうのはすごく面白いね。
… 一般受けするかどうかは別として。